第四十四回 About C4DL コラム「ハウジングフェス」

初めてSさん夫妻に会ったのは昨年の7月。あれから1年と2カ月が経ち、ついに住宅が完成しました!名付けて「ダンジョンハウス」。
三角地で高低差が2mもあり、通常なら家が建つとはとても思えない土地。崖条例、北側斜線、地中に埋まった排水管など、あらゆる難題が山積みで、長く放置されていた土地と聞いて納得してしまうほど。そんな土地の有効面積を最大限活用し、建築面積わずか12坪の中に1階、1.5階、2階とスキップフロアを採用することで、Sさん夫妻の要望をすべて叶えた夢の新居がついに完成。

今回のコラムでは、「ダンジョンハウス」を紹介したいと思います。
先週からハウジングフェスも開催しており、今週末の9月14、15、16日も開催する予定です。

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この場所にいったいどんな家が建つのか。図面を見て想像を膨らませてはいたものの、実際の物件を見ると、予想をはるかに超える素晴らしさに、ため息がもれるほどだった。

外壁は白と黒をベースとして、木材をところどころに使用、花ブロックがアクセントになっていてとてもいいバランスに仕上がっている。木材部分は、メンテナンスがしやすいように、手の届く範囲にのみ使用しているところがうれしい。

ドアを開けると広々とした玄関ホールが広がる。玄関から外に出られる掃き出し窓も設置され、小庭に出入りできるようになっている。広い玄関ホールは、玄関としての機能だけではなく、趣味のスペースとして活用したり、子どものちょっとした遊び場や友だちとのおしゃべりの場にしたり、わくわくするような空間になっている。

玄関の一部は背後に土を抱えているので、壁を強固にして擁壁の役割を果たしている。そのため湿気がたまりやすいので、湿気に弱い壁紙は使用せず、断熱性及び吸音性などがある木毛セメント板とジョリパット仕上げにし、メンテナンスフリーにしている。
「ひと手間かけるのがデザイン」と後藤さんが話すように、玄関の天井部分はもともと一枚板のパネルだが、それをあえて切って使い、デザイン性を高くしている。

1.5階へ続く階段には青のタイルが施され、青の壁と青タイルの階段の色のバランスが絶妙で、インパクトが大きい。

1.5階に位置するリビングは、約7畳の広々としたウッドデッキにつながり、折り畳み式の窓を開けてフルオープンにすると開放的な空間になる。

ウッドデッキは耐久性の高い樹脂木材を使用し、デッキ部分と鉄骨との間にゴム素材の部品を設置している。木と鉄骨が直に触れ合うと、鉄錆がでたりして木が傷みやすくなる。それを防ぐために一つ一つの鉄骨にゴムをかませているのだ。これは手間がかかるので、ここまでやらない業者も多いとのことだが、ひと手間かけることで長く安心して使用することができ、住人にとってはありがたいことだ。

リビングから3段上がったところに後藤さんが手がけたカウンターキッチンがあり、Sさんの奥様がセレクトしたブルーのタイルが壁いっぱいに施され、カフェのような居心地のいい雰囲気。

キッチンに立つと、階下にリビングを見渡すことができる。またシンク前に立っていても、その後ろを通って冷蔵庫に行けるように、幅を少し広めにとっているそうだ。こういう細やかなところがうれしい。

1.5階から子ども部屋と寝室がある2階への階段は、南側に設置。階段は北側に作ることが一般的だが、あえて南側につけて、階段の大きな窓から光を取り入れることで、キッチンへと光が射し込み、キッチンをちょうどいい明るさにしてくれている。また2階の寝室から朝の光を浴びながらキッチンに降りてくる動作を想像すると、すがすがしい朝を迎えられそうだ。

2階は子ども部屋2部屋と寝室。それぞれ2、3段ほどの階段を使って部屋に入るようになっている。この土地は高さ制限があるため、天井高をキープするために上ってから下りるという「ダンジョン」的な構造になっているのだ。この、ちょっと上ったり下りたりという造りが、なんとも楽しい。また、天井の構造梁を隠さずあえて見せることで解放感がうまれ、ナチュラル素材の梁がアクセントにもなっている。


「ただ広い部屋があればいいというのではない。広くとるところは広く、狭くていいところは狭く。メリハリをつけることで、家が一層面白くなるし、あっという驚きがあるとさらに楽しい」と後藤さん。「生活の一部がドラマチックになるような、そんな家がいいよね」とも。

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三角形で高低差もあり、斜線規制の関係で有効面積も小さく、難題が多い土地。構造計算も複雑になり、建築確認の資料は通常のなんと3倍の厚さになったという。

デザイナーの後藤さんを始め、細かなところまで真摯に対応してくれる高橋さん、豊富な知識と経験をもつ頼りになる存在の小関さん、いつも和やかな雰囲気にしてくれる平田さん、女性ならではの視点でとらえてくれる田上さんと中村さん、新たにデザイナーとして加わった鎌田さん、チラシ作成やバナーデザインをされました。建築現場では、資材置き場や打ち合わせスペースなどを確保するのがなかなか難しいが、ハンサムこと佐々木さんが持ち前の明るさで向かいの家の人と仲良くなり、その家に建築資材を置いたり、トイレや事務所としても貸してもらえたりするようになったという。そのほか多くの方がお互い信頼し合って何事にも真面目に取り組んだ結果、このような素晴らしい家が完成したのだと思う。

そして何より、当初の計画より大幅に遅れ、心配な面が多々あったと思うが、常に平常心で接して理解を示してくれるSさん夫妻だったからこそ、あらゆる困難な条件を克服して理想の家が実現したのだと思う。ハウジングフェス当日、実際の家を見たSさんが「想像以上のよさ」と言って笑顔で家を眺めている姿がとても印象的だった。

今まで1000件近くの家にたずさわってきた後藤さんが、自身の中のベスト3の難易度だったというくらい、すべての知識・デザイン・思いを詰め込んだ家。
これからSさん家族の幸せな思い出がいっぱい詰め込まれていくに違いない。

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今週末の3日間(9月14日~16日)、ハウジングフェスを開催しています。
この機会に是非会場を訪れて、実際にこのダンジョンハウスを体感してみてはいかがでしょうか。

株式会社フィット 十津川でした。

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