今週は、先週紹介した建築デザイナー後藤宏樹さんの実際手がけている千葉市の物件から、彼のこだわりに迫ります。
9月から施工を始めたというY邸は年内竣工を目指して、約50坪の細長い土地の形状に、キューブ型の建物をベースにした2階構造の物件を建築中だ。11月13日、その進捗を確認するとともに、後藤さんのこだわりを探りに現場に行った。
後藤さんは家を建てる際にまず「家の外観・フォーム」「土地に対し家の顔がどう見えるのか」、そして「顔の与える印象」はどうなのかを考えるという。今回の土地は北側が道路に面し、南側に雑木林がある。それゆえリビングを2階に配置し、緑が見渡せるように設計している。
一方、雑木林が陽の光を遮り、デメリットにもなりかねないので、光を上部から採ることを考えた。キューブとキューブをつなぐように、そのつなぎ目の中央部分にバルコニーを配置し、左右に光を流すように設計した。
次に「風通し」を考慮するという。なぜなら、日本家屋は湿気の高い夏を基準に設計するのが基本だからだ。夏は陽が高いところから射すので風通しをよくし、日影ができるようにして、日影を流れる風がひんやりと心地よさを体感できる設計をしている。北海道はもちろん雪の多い冬を基準にするので陸屋根(ほとんど勾配のない平らな屋根)はありえず、逆に沖縄は通年夏なのでコンクリートブロック造りが多いなど、風土によって材料はそれぞれ違ってくる。
フォームは立体的に見せるために、人気のキューブ型の建物をベースにはしているが、そのキューブをわざとずらすことで建物に動きを出している。上部に箱がついているように見せるが、1階部分に比べ若干2階部分の高さを抑えることで、頭でっかちになるのを防ぎスマートな印象を与えている。
そして外壁の一部に木材を使用し、バルコニーには花ブロックという石、そして金属も使い、「多様な素材を使うことで表情豊かな家ができるんです」と後藤さん。しかし、表情豊かになるからといってアクセント的に使えばいいというわけではない。
木はメンテナンスが必要なので高い場所には使わない、バルコニーの花ブロックは洗濯物の目隠しにもなるうえ風を通すので都合がよいなど、なぜその場所にその素材が使われるのか適材適所を追求している。
そして、人の動線を考慮し、帰宅した際にはリモコンで車庫のシャッターを開け入庫し、時には車庫で車を眺めながらくつろげるようそのスペースも用意。そして玄関に入り、リビングのある2階へ上がっていく動きをデザインが先導する。その一連の動きをいかに格好よく演出できるかを想定して設計するという。
Y邸のコンセプトは「集う」。来週はその「集う」に迫り、家族や来客がどう集いどう過ごすのか、そのスタイルを紹介してきます。
株式会社フィット 大西でした。