第73回 About C4DL コラム「建築デザイナー後藤宏樹さんのアイデアの泉を深掘り!」

このコラムが始まって約5年。第2回で建築デザイナー後藤宏樹さんを取り上げましたが、それからさまざまな後藤さんによるデザイン住宅が建ち、コラムでも紹介してきました。「C4DLで建てたい」「後藤さんにデザインをお願いしたい」と、多くの人がC4DLの扉をたたいてきました。

今回、「後藤さんの尽きることのないアイデアとはどこから生まれてくるのか?」という私、大西の疑問に答えていただけるとのことで、取材をさせていただきました。

後藤宏樹のアイデアの泉のありか


◇大西:後藤さんがデザインされた数々の住宅をコラムで紹介させていただき、毎回斬新なアイデアが散りばめられた後藤ワールドには感心しきりでした。アイデアの源はどこにあるのでしょうか?
◆後藤:好奇心の違いにあるんだと思います。好奇心は誰にでもあると思うんですが、好奇心が旺盛であれば波が生まれ、小さければ平坦に近く・・・。子どもの頃の好奇心を忘れたくないという気持ちでいつもいます。 
◇大西:波が生まれるとのことですが、人生の山あり谷ありとは違うんですよね。
◆後藤:そうですね。子どものころ、何を見ても驚きや感動を覚えた、その感覚、感情の起伏という意味です。波が小さいということは興味がないことと同じになると思うんですよ。興味がないと不要だと思う情報は排除してしまいますが、興味があれば一見要らないと思えるような情報も、何かに使えないか考えようとするものです。
◇大西:興味がないと素通りしてしまいますものね。
◆後藤:ただ、人生の山あり谷ありでいうと、良いことと悪いこと、山と谷が存在しないと人生自体はダメになると思っています。結局、比較できる要素がないと良さもわからないですから。

身体を動かし、好奇心を増幅する出会いを大切に

◇大西:好奇心を失わないためにしていることはありますか?
◆後藤:努力は特にしていないです。でも動かないと絶対ダメです。じっとするのがダメなんです。
◇大西:後藤さんのアイデアの泉に枯渇はなさそうですね。
◆後藤:好奇心が旺盛だからなんでも面白いと思えるし、旺盛な好奇心のまま生きていけばアイデアの引き出しはなくならない。アイデアが枯渇しないのは、やはり好奇心を持っているからです。しかも、自分の仕事は、好奇心を持とうと思ってやっているのではなく、好奇心を持っていないと通用しない世界なんです。
◇大西:では、好奇心の源はなんなのでしょう?
◆後藤:それは人と接することです。この仕事は常に新しいお客さんとの出会いから始まります。
◇大西:そうですよね、リピーターというのはまずいないんでしょうね。
◆後藤:はい。人それぞれ価値観が違うので、その価値観に刺激を受けます。お客さんとのコミュニケーションを大事にしています。
◇大西:家を作るに当たって、C4DLさんはヒアリングを重視していますよね。
◆後藤:お客さんが何を考え、何を求めているのか、丸ごと受け止め咀嚼します。そして、ぼくも波を起こしたいし、お客さんにも波をおこしてほしいと思っています。大切にしているのは人間関係で、話をしながら、お互い波をおこし、波長を合わせるようにしています。
◇大西:好奇心を持ち続けるために、ほかに努力されていることはありますか。
◆後藤:本はたくさん読みますね。

僕らのデザイン住宅に住めば絶対幸せになる


◆後藤:お客さんのためになっているか、ということをいつも考えています。
◇大西:具体的に教えていただけますか?
◆後藤:お客さんに、家に住むことってこんなに豊かなんだよということを知ってもらいたいと思っています。喧嘩がなくなる住宅というものもあるんです。
◇大西:へー、そういう家はいいですね!
◆後藤:そこに住む夫婦がポジティブな思考でいれれば、子どももそういう風に育っていきますよね。真っ暗な家で育った子どもに好奇心が生まれますか?建てた家は、将来子どもが明るい未来を抱ける家であってほしいし、今の若者が住宅を通じてどう生きるかを考えられるものであってほしいと思っています。
◇大西:家が子どもの豊かな思考を育むんですね。
◆後藤:家族も、お父さんとお母さんがどんな関係性なのかを感じられる家がよいと思います。別々に寝る夫婦でも関係性がよければ問題なく、それが正しく感じられる間取りがあります。家族で暮らすこと、子どもを育てること、何を守っていくのか、家づくりを通じて感じられる家がつくれます。僕らのデザイン住宅に住めば絶対幸せになれます。

建てて終わりではない家づくり


◇大西:わたしはC4DLの家の外壁に木材が使われているのが好きです。
◆後藤:家は建てて終わりではないんですよ。外壁に木を貼るときに、1年に1回メンテしてくださいと旦那さんにお願いしています。持ちがよいことはもちろんですが、イベントとして意味があります。父親がメンテしていて、それを子どもが手伝い、天然木なので変化していくことを教育できます。さらには物を大事にすることも伝えられますね。清潔に保たれている家は幸せになれる家だし、好奇心を育める家だと思います。
◇大西:メンテを親子のイベントとしてとらえるんですね。
◆後藤:時間についても教えられます。メンテをしなければ家は朽ちていきますし、逆にメンテを繰り返すことで、時間の経過と共にいい色に変化するので、変わることはいいことだと感じる感性も育てられます。
◇大西:デザイン上のアクセントとしてとらえていましたが、作業を子どもとすることでイベントになるし、メンテを通して時間の経過や子どもの成長も感じられるんですね。
◆後藤:もちろんアクセントという意味もありますが、デザインはいくつもの意味合いがあるのがいいデザインだと思います。
◇大西:いくつもの意味が含まれているというのは確かに素敵ですよね。
◆後藤:伊勢神宮では、20年に一度、社殿や神宝類、ご装束類のすべてを一新して大御神のお遷りを仰ぐ式年遷宮が行われていますよね。
◇大西:ニュースになりますね。
◆後藤:あれは日本の文化のルーツを伝え、伝統技術を保存継承するという意味合いがあるとのこと。メンテで建物を守ることが伝えられるんですよ。建てて終わりではないんです。
◇大西:そういった思いが含まれていることを知ると、家づくりのおもしろさ、奥深さを改めて感じます。建てて終わりではないという意味がよくわかりました。今日はありがとうございました。


いかがでしたでしょうか?
後藤さんのアイデアの泉は枯渇とは無縁のようですね。
これから家を作ろうと考えている方々に、建築デザイナー後藤宏樹さんの建築に対する思いが伝わればうれしいです。

株式会社フィット 大西俊子でした。

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