約1カ月に1回、C4デザインレレーベルで開催されている「座談会」。
C4という会社を広く知ってもらうため、C4の建築デザイナーはどういう人物なのか、また住宅に関することを気軽に相談できる場を提供することを目的として、今年の4月から毎月テーマを変えて「座談会」を開催している(予約不要、参加無料)。
今回のお題は「先行く試み、受け継ぐ価値観」。少々難しいテーマだがどんな話が繰り広げられるのか、座談会に参加した様子をお届けします。
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今回の参加者は、美容院関係者や住宅設備関係者、現場監督を志している学生や保険関係など業種はさまざま。フィットからは私と大西、C4スタッフ4人の計13人で座談会はスタートした。
まずは、営業企画の平田宗顕さんがサイフォンで淹れるコーヒーとお菓子を頂く。
今日のお菓子は「ベルンのミルフィユ」。席には「OMIYA ベルン ミルフィユ」と書かれた1枚の紙が置かれており、そこにはベルンの紹介文が書かれている。
1948年に創立した日本の菓子店「ベルン」は、ミルフィユを日本で初めて作った。このベルンは「美味しいものを作っていれば自然と売れる」という信念のもと、広告宣伝を一切行わず、今でいう「口コミ」だけで商品を販売している会社だという。スタートからいきなり面白い話題提供に、参加者からは感嘆の声。毎回座談会で用意する菓子について、建築デザイナー後藤宏樹さんがとことん調べ上げるという。「美味しいと言われている菓子には、その菓子にまつわるエピソードがあり、調べるといろんな発見もあり話が深くて面白い」と後藤さん。建築の世界でも参考になることがあるそうだ。
取締役の高橋邦生さんの司会のもと、座談会は進められていく。昔は使われていたが今は使わない建材の紹介や、ガラスやコンクリート、鉄などのように昔は住宅には使われていなかったが今は当たり前のように使われているものなど、様々な事例が紹介される。住宅に関する豆知識的な話がどんどん紹介され、後藤さんの知識の豊富さに驚く。
次に「新旧どちらがいいか」の話題に。「昔からあるものは好き。洋服でもインテリアでも何でも、昔のものには敬意を払って受け継いでいきたいと思っているし、昔の人の精神を感じて生きていきたい」と後藤さん。家づくりをする上でも、尊敬できるモノを使うようにしているという。「尊敬できる人にはなかなか出会えないと思う。モノに対しても同じ。だからこれだと思うモノに出会った時は、それをずっと使いたいし、そういうモノにはお金を払っても価値があることだと思う」と持論を展開する。
参加者から「固定概念」という言葉が出た。そこで後藤さんが全員に「魚の絵を書いてみてください」という。「魚の頭を左にして書いた人は手を挙げて」というと、全員が手を挙げた。「まさにこれが固定概念」と後藤さん。小さい頃から見ている図鑑や絵本、店舗でも必ず左に頭がくるようになっているので、イメージが植え付けられているのだという。こういった固定概念を取り払ってデザインすることが楽しいし、わくわくする家につながるというのだ。
ただ、お年寄りの家の建て替えの時には、間取りはできるだけ残し、家具などの配置もほとんど変えないという。「高齢になると、家の中への光の入り方が違うだけで違和感を覚え、生活がしづらくなる。残りの人生を快適に過ごすためにも、最先端は必要なく、同じ環境のままの方がいいと思う」と後藤さん。住んでいる人がどういう人か、日常はどういう動きをしているのかを俯瞰的に見て、何を求めているかを深い部分まで掘り下げて、デザインを提案している。
建築デザインをするときには、依頼主と話を煮詰めながら、一つの筋道を決める。こちらが曖昧だとだめ、決めたことに対して責任を持ってとことん突き進む。「朝も昼も夜も、断ち切ることなく考え抜く」というのが後藤さんのスタイルだ。また「最先端を提案するには、とにかく勉強をやめず、し続けること」と後藤さん。この言葉は心に響いたと話す参加者もいた。
今回の座談会に参加して、改めて後藤さんの知識の幅の広さ、深さに驚かされた。高橋さんの巧みな司会進行で、参加者全員が発言した座談会。たとえ答えがなくても、一つのことに対して掘り下げてみんなで意見を交わすことで、自分自身の意見が確認出来たり、いろいろな角度から家づくりについて考える時間になったり、参加者は非日常的な課題での座談会に、満足した表情で会場を後にした。
次の座談会は2月の予定。どんな話題が繰り広げられるのか、今から楽しみだ。
次回のコラムは来年となります。みなまさ、良いお年をお迎えくださいませ。
株式会社フィット 十津川でした。